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めぎのフィギュアスケート観戦記 選手の人生・その後の人生 [2017年春 ヘルシンキ]

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現在、4月はじめのフィギュアスケート世界選手権の観戦記を連載中。

ここは会場のヘルシンキのハートウォール・アリーナ。4月1日は雪のちらつく寒い一日だった。
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男子シングルはフィリピンの選手から始まり、マレーシアとかオーストラリアとかの選手もいて、温かい国の選手の今期最高の晴れ舞台に臨む緊張感ややり遂げたという空気感はとても素敵だった。優勝などとても望めないレベルだけど、彼らも人生を懸けてここに来ているという意味でハーニュ君やウノ君と何ら違いがない。若い彼らが全力で演技する姿は感動的で、めぎは最初のフィリピン人の時点でじーんと涙が浮かんだほどだった。

しばらくして、ドイツの選手の番が来た。彼もそこそこ満足できる演技だったようで、よかったよかった。
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偶然、めぎの斜め前にドイツ人夫婦がいた。ドイツの選手の時だけこうやって応援していた。ドイツにもフィギュアファンっているんだ!なんだかちょっと嬉しかった。
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選手の数だけドラマのある舞台。なかでもやっぱり、この選手の時は前半のハイライトだったというか、ハーニュ君の歴史的瞬間に負けないほどの感動が会場全体に沸き起こった。恐らくこの世界選手権を最後に選手引退するのではということだったが、その最後の大舞台で人生最高の演技をし、本人も感極まって大満足で、観客のこちらも大感動のスタンディングオベーション。なんて素敵な花道だったことかしら。
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彼はウズベキスタンの選手だが、ロシア系の母親と中国系の父親のおかげでロシア語と中国語ができ、さらにアメリカでトレーニングしたおかげで素晴らしいアメリカ訛りの完璧な英語を話す。これは次の日のスモールメダル授与式の様子なのだが、3位のボーヤン・ジン選手の通訳をしたのは彼だった。凄い、ホント中国語ぺらぺらで、完璧なアメリカ英語。
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彼はこの語学力を活かしてフィギュアスケート界で日本以外のどこででも生きていけるだろう、とドイツの解説者が言っていたが、ホントその通りだわね。既に振付の仕事をしているそうで(自分のショートやフリーも自分の振付だったらしい)、今後が期待できる。これは彼のエキシビション。
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こうやって次の仕事を選手生命を終えた後すぐに自ら切り開いていけるというのは素晴らしいし、選手は誰もがいつかそうしなければならない時を迎えるのだが、それぞれみんな自分にあった仕事を見つけられるといいわね。でも、それってきっとホント大変なことなのだろうな。華やかな舞台にいたことがあればあるほど、引退後の身の振り方は難しい。めぎだって15才までかなり華やかな世界にいたので(ヤマハのコンサートで春夏冬と定期的に舞台に立って常に注目を浴びる人生を送っていたのだ)、その後地に足をつけて普通に生きていくのって慣れなくてとても苦労したのだ。同じくオペラの舞台に立っていたうちのドイツ人もそうだけど、エンターテイメントの世界にいた人間ってやっぱりどこか自意識過剰で、群衆に埋もれるのは苦手のはず。世界選手権に出るような選手はその分野ではその国のトップなのであって、引退後もどこかで誰かが観察してるし、普通に生活すること自体どれほど大変なことかしら。

そういう意味で、今回この人のことが非常に心に残った。
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シュテファン・ランビエールである。
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彼のインタビューがネットに出ている。コーチとしてここに来た感想などを言っているのだが、世界選手権で優勝したことのある人がこうして選手の縁の下の力持ちになって現れるというのは、これまたなかなかできることではない。下手するとこのランビエールのように選手よりコーチの方が注目される訳だし、彼だってかつては花形だった訳だから注目されるのはまんざらでもないはずだ。そして何よりも、花形選手だった人が必ずしも良い師になれるとは限らない。だから良い選手が師事してくれるとも限らない。しかしこのランビエールはコーチとしても非常に良いスタートを切っている様子が伺えた。



選手との様子を観察していると、絆が感じられる。絆は深く強いけど、そしてとても似た二人だけど、でも別々の二人で、そこに太い架け橋があって共通の目標が見えているという感じ。それは見ていてとても美しかった。分野も立場も全く違うけれど、めぎもああありたいなと思わされた。
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彼ら師弟は、お互いにお互いが似ていることを相当に意識しているだろう。これは今回の世界選手権とは全く関係のないアイスショーの映像だけど、これを見ると、美しいこのショーの裏にどれほどの葛藤があり得ることだろうかと色々と想像してしまう。だって、この音楽は、選手のフリープログラムの音楽なのだ。それを師の方がこんなにも美しく滑ってしまうのだから、そしてたぶん観客の方もどっちかといえば師の方を見に来たのだろうから、若い選手の方は立場がない。でもきっと、それを乗り越えたからこそ二人に絆があるのかも知れない。今後のこの二人には大注目である。



さて、コーチとどのような関係を築くかが成功の鍵なのではないかと思わされたのはこの選手の時も。
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なんというか、彼らは親友同士のようで、それがこの選手に非常によく作用してて、彼の思いきったプログラム構成も全員の納得の上であることがよく分かり、その結果も全員で受け入れる用意と覚悟ができていて、なんとも清々しかった。フィギュアって、想像以上にコーチと選手の関係が大きく左右する競技のように感じられた。
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そして、何と言ってもこの選手の時、コーチと選手の関係を大いに色々考えさせられた。
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彼は次の日のスモールメダルセレモニーの時に、来シーズンの音楽については自分ではよく分からない、コーチがいいのを選んでくれるだろう、と断言していたが、それを聞いてめぎは、彼にはまだ自我が全く無く(または自我を出さないようにしっかり訓練されていて、発言にも決して自我を出さないようにしているのかも知れないが、喩えそうだとしても)、この上なく優等生なのだなと感じた。師にとっては完璧な愛弟子である。それが今のところここまで良い結果を出している訳で、今後彼が大人になって行くにつれてどうなるのか、めぎは非常に興味がある。師としては、もちろんその分野での成功へ(学校なら入試に受かるとか良い成績をとれるように、フィギュアスケートなら大会で優勝できるように)弟子を導くのが最大の仕事だが、同時に弟子の人間としての成長にも寄与しなければならないとめぎは思うのだけど、この選手の場合は少年であり続けることで、言い換えれば手塩にかけて育ててきた子どものような存在であり続けることで成功しているようにめぎには見える。もし本当にそうだとしても、あの音楽をコーチが選び、その選曲は見事で、トレーニング法も完璧であそこまで見事に成長し、それであれだけの成績につながったのだから、現時点では文句のつけようがない。

でも、人の心に残る演技という意味でいえば、やっぱり自我のある方が、喩え失敗してメダルを逃しても訴える物があるようにも感じるなあ・・・今回のハビさんの演技のように。めぎには正直なところ、ボーヤン君の演技の方が、表現力の点数はウノ君よりずっと下だったしその理由もよく分かるけど、それなのにずっと心に訴えてきたように感じたのだ。それは、ボーヤン君に明確な自我があるから。フィギュアスケートで表現力という言葉がよく使われるしそれが点数化もされるのだけど、確かにネイサン君はバレエのポーズが決まってて表現力があるし、ウノ君のダンス力は定評があって確かに凄く上手いのだが、そして何といってもめぎは今までテレビで観てきてウノ君の表現力に脱帽してて実は高く買っていたのだが、生で見てみると、不思議なほどこの二人からはまだ魂が感じられなかった。一つ一つの動作は優雅で決まっているのだが、彼らの魂というか、表現したいことの意図が少なくともめぎには伝わってこない。それは大きな発見だった。

選手生命という短い期間でいえば、自我を持たずに極めることも可能だろう。ネイサン君やウノ君が来年優勝する可能性は非常に高い。でも長い人生でいえば、思う存分自分の人生を生きなければ、そしてそこで一人とことん苦労しなければ、このコーチのような幸せは生まれないのではとも思う。それは何も弟子を優勝させることではない。結果は残念でもハビさんとも彼は幸せそうだった。選手を支え、そのそばにいることに本当に幸せを感じているようだった。でもそれは、自分の育てた手中の子どもと一心同体で得られるような幸せではなく、個人と個人が長い人生の中の一瞬の喜びや悲しみを分かち合えるという幸せであるように見えた。たぶんこのコーチは自分の人生を思う存分生ききって、だから今こうしてプーさんを持って後進のために力を注げるのではないかと感じる。彼の人生があるのとパラレルに弟子にも弟子の別の人生があるというスタンスは、見ていて気持ちが良い。めぎも、斯くありたいな。そんなことを見ていて思った。
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なにはともあれ、ハーニュ君にもウノ君にも10年後20年後にまた別の何かを見つけて50年後にも自分の人生を謳歌して生ききって欲しいし、引退したというマオちゃんという人にも、30年後40年後に笑っていて欲しいと思う。最近はどうしているか全く耳にしないけれど、かつて日本のフィギュアスケート界を牽引し、まだ何もなかったところに道を切り開いた渡部絵美さんや伊藤みどりさんに幸多かれと願う。若さを失い、力も失い、人から忘れられていったときに何ができるか、それが人生の勝負なのだ。

さて、付け足しだが、アリーナ会場の様子を少し。ここは報道陣か関係者席だと思うのだが、前半は非常にまばらで後半はぎっしり。
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日本人が非常に多かった一角。ツアーできているのをたくさん見かけた。
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上まで写さなかったが、2階席までぎっしり。
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1階席と2階席の間に家族席のような空間があった。
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それから2階席の一角に、レストラン席もあった。チケットにはVIP席というカテゴリーもあって、その席の人は会場を眺めるレストランでの食事つきとのことで、たぶんそのチケットの人たちなのだろう。
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めぎは男子シングルの後、アイスダンスも鑑賞。その時の席はジャッジ側。近くにポーランドの人や・・・
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フランスの人がいた。
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これは帰りに駅までの道で振り返ってアリーナを写したもの。
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なんだか長くなっちゃったわね~まだエキシビションもあるんだけどな・・・

撮影: Xperia Z1、D600 + 70-300mm(F4.5-5.6)、Nikon 1 V3 + 18.5mm(F1.8)
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